2018年4月 8日 (日)

PixInsightで画像処理を始めよう ~ 第1回 画像処理の威力

1-1. はじめに

皆さん、こんにちは。または、こんばんは。そして、初めましての方は初めまして。
今回から、ユニテックさんのブログの場をお借りして、天体写真の画像処理方法の解説を連載させていただくこととなりました。不定期の連載になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、このブログをご覧になっているということは、皆さんは雑誌やインターネットで美しい天体写真を見たことがあって、天体写真にそれなりに興味を持っておられるということでしょう。ここ、ユニテックさんのブログや SWATユーザさん達の Photo Galleryにも素晴らしい写真が沢山掲載されています。
あんな写真が自分にも撮れたら素敵ですよね。

でも、望遠鏡やレンズにカメラを取り付けて、ただ撮っただけではあんなに綺麗な写真は撮れません。実は、皆さんがよくご覧になる綺麗な天体写真は、程度の差こそあれ、ほぼすべて画像処理が施されたものなのです。今や天体写真に画像処理は、なくてはならないものと言っても過言ではありません。

 でも、画像処理ってなんだか難しそう。
 それに、どうせ画像処理したって、元の画像と大して変わらないでしょ?

と思っているアナタ。

そんなことありませんよ。
まずは、撮った写真が画像処理でどれほど変わるのか、その変わりっぷりに驚いてください。

最初は、明るくて一番身近な天体、月の拡大写真です。

●月面
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図1-1. 月面

処理後の画像の高解像度版は こちら からご覧いただけます。

カメラの撮って出し画像は、ザラザラでなんだかぼやけてしまってますよね。皆さんの中にも、月の写真なら撮ったことがあるという人はいらっしゃるでしょう。その写真を拡大して見てください。この例のように、ザラザラで少しぼやけているはずです。

ザラザラなのはノイズのためです。
そして、ぼやけているのは、ピントが合っていないからでは決してありません。

ぼやけているのは、地球に大気があるからです。
月に限らず、遠くの建物や山の写真を撮ったり望遠鏡で覗いたりすると、遠くにあるものほどぼやけてしまって、はっきりとは見えなくなりますよね。あれと同じです。さらに、上空には強い風が吹いていて、光が揺らいで見えてしまいます。星が瞬いて見えるのはそのためですが、そうした地球の大気の影響によって、どんなにピントを合わせても月の表面はどうしても少しぼやけて写ってしまいます。

ところが、画像処理した方は、滑らかではっきりくっきりとし、表面の微細な構造が見えるようになっています。例えば、処理後の画像には、中央から少し左下に「へ」の字形をした細い筋みたいな地形が見えますね。カメラ撮って出しの写真には、この筋はあまりはっきりとは写っていないのですが、画像処理するとくっきり見えるようになっています。

これは「ヒギヌス谷」と呼ばれる谷で、この谷の幅はだいたい 2~3kmだそうです。単純に 3㎞だと仮定して、この日の地球と月との距離から単純計算すると、東京日本橋から見て、浜松市あたりにいる人の身長が、だいたいこの谷の幅と同じくらいに見えることになります。凄い解像度ですよね。わずか 7cmの望遠鏡でもこのくらいには撮れます。もっと大きな望遠鏡を使えば、もっと解像度を上げることも可能ですが、それでも撮ったばかりの画像はぼやけているので、いずれにしても画像処理が必要となります。

では、続いて次の写真を見てください。

●アンタレス周辺
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図1-2. アンタレス周辺

処理後の画像の高解像度版は こちら から。

これはちょっと極端な例ですが、これに至っては、撮って出し画像と処理後の画像はもはや別物と言いたくなりますね。元が同じだとは、にわかには信じられないくらいに違います。

皆さんの中には、Photoshop か何かで風景写真やポートレート写真をレタッチ(修正・加工)したことがある人もいらっしゃるかもしれませんが、これはもはや「レタッチ」というレベルではありません。初めて見る方は、きっと驚かれることでしょう。

撮って出し画像が全体的にピンク色っぽいのは、天体改造したカメラで撮ったためにカラーバランスが崩れているからなんですが、それを除いても、撮って出し画像は全体的にほぼ一様に明るく写っていて、コントラストが低いですね。

この例に限らず、天体写真は暗い宇宙空間にある淡い天体を撮るものなので、撮ったばかりの写真はどうしてもこの例のように低コントラストに写ってしまうものなのです。

ところが、画像処理すると、漆黒の宇宙に淡い星雲が広がっている様子が高いコントラストで写し出され、色彩も実に鮮やかな画像になっています。

ちなみに、これはさそり座の頭部、1等星のアンタレス周辺の写真です。肝心のアンタレスが写っていない等、構図が悪いのは、本当はこの上下(南北)にもう1パネルずつあって、それらを繋げた作品を撮った時の素材だからです。(上下に3パネルを繋げた写真は こちらから ご覧いただけます。)

この辺りは、全天で最もカラフルで美しい領域として天体写真ファンの間で大人気で、春から初夏にかけてたくさんのファンの標的になります。ただしこれらの星雲は非常に淡いので、初心者がいきなり挑戦するとかなりの確率で撃沈してしまう、難度の高いターゲットではあります。しかし、ここを上手に撮れたら感激すること間違いなしですので、臆せず果敢に挑戦してください。

では、続いてもう一枚。今度は冬の星雲の写真も見ていただきましょう。

●魔女の横顔星雲
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図1-3. 魔女の横顔星雲周辺

処理後の画像の高解像度版は こちら から。

これも先ほどと同じように、撮って出し画像とはまるで別物のような写真になっていますね。こんな星雲どこに写っていたんだ、と思いたくなるほどです。

ちなみに、この写真の左下にひときわ明るく写っている星は、オリオン座の一等星のリゲルです。皆さんも一度は見たことがある星じゃないでしょうか。
そして、この写真の下半分に細長く白っぽく写っている星雲を逆さまにしてみると・・・

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図1-4. 毒リンゴをお食べ

悪い魔女の横顔そっくりに見えませんか?
こんな人にリンゴを渡されそうになったら全力でお断りしたいですね(笑)。
この星雲は、このような形をしているところから、その名も「魔女の横顔」(英語では "Witch Head")星雲と言われていて、これまた天体写真ファンに人気の星雲です。こちらの星雲も淡いので、初心者がいきなり写すのは難しいかもしれませんが、こんなものが写せたらこれまた楽しいですよね。

どうですか。これが画像処理の威力です!

これほど劇的に変わるものなら、画像処理をやってみようという気になってきませんか?
画像処理で、あなたの撮った(あるいはこれから撮る)天体写真を劇的に美しく仕上げてみたくなりませんか?

この連載では、そんな皆さんを華麗なる画像処理の世界へご案内いたします。

なお、当然のことながら、天体写真の画像処理をするには、まず天体写真を撮らなければいけませんよね。しかし、天体写真の撮り方とか、4月10日発売のSWAT-310の恒星時目盛環の使い方とか、そういったことはユニテックさんがやさしく解説してくれると思いますので、その辺りのことはこの連載ではさらっと華麗に丸投げするスタイルでやっていくことにしましょう(笑)。

<つづく>

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