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2013年9月20日 (金)

エイジング効果。

エイジングとはギアを摺合せ研磨して精度を向上させる手法です。SWAT-200はエイジング効果が非常に高い快削黄銅製ウォームネジとジュラルミン製ウォームホイールを組み合わせて採用しています。通常の赤道儀をエイジングしても、ギアの材質の関係であまり効果は期待できません。特にウォームホイールがステンレスなどの硬度の高い材質やウオームネジが鉄で焼き入れをしてある場合、どちらか一方が摩耗してガタが多くなるだけで精度が上がらないことがほとんどです。

SWAT-200のウォームホイールとウォームネジも充分なエイジング処理を行って出荷しています。その効果を画像でご紹介しましょう。以下のピリオディックモーション画像は、SWAT-200に超望遠レンズを搭載し、極軸の東西をずらすことによって、南中赤緯0度の恒星の軌跡を赤緯方向に流して撮影したものです。

Pe1_3 ●エイジング前の状態
上の写真はエイジングをする前のギアを組み上げたばかりの状態です。通常、組み上げたばかりのピリオディックモーションは±15~±30秒角程度ですが、この例では約±18秒角となっています。これは100mm望遠レンズを長時間追尾できる程度の精度です。大きな振れは主にウォームネジの偏心や加工精度によっておこり、ギザギザの細かい振れはギア切削面の状態が影響していると考えられます。一般に販売されている赤道儀の多くは、エイジングをしないこの状態のままで出荷されています。

Pe2 ●エイジング途中
次の画像はエイジングの途中です。ピリオディックモーションの振れ幅がだいぶ少なくなっています。さらにギザギザも解消して、全体的になめらかになってきました。

Pe3 ●エイジング完了
最後はエイジング完了後の状態です。SWAT-200のウォームまわりは、このような作業を経て出荷されています。非常にデリケートな処理のため、個々のピリオディックモーションの状態には差が生じてしまいますが、画像の例では組み上げた状態の3分の1以下まで精度が上がっています。SWAT-200は、±10秒角前後のなめらかなサインカーブを描く状態に仕上げて出荷しています。

SWAT-200のなめらかなピリオディックモーションの秘密は、この「エイジング処理」によるところが大きいといえます。ギアが同じように仕上がって見えても、個々には微妙に違いがあって、精度に個体差が生じてしまうのはやむを得ませんが、SWAT-200ではその差が極めて小さくなるように仕上げています。

通常の赤道儀は、このような手間のかかる処理はコスト的にできません。そのため、一番上の画像の状態で販売されている製品がほとんどですが、その状態はウォームまわりの機械加工精度の限界となっています。あり得ないような高精度を謳った製品も市場に出回ってますが、機械加工の限界を考えるとおかしいことに気づくと思います。たまたま精度のよい個体に仕上がることも考えられますが、それは製品の数%に過ぎないということも考慮しておいた方がよいでしょう。もちろん、全製品を検査している場合はこの限りではありません。

http://www.unitec.jp.net/

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