SWATのウォームホイール
今回はウォームホイールのお話です。SWATシリーズ赤道儀のウォームホイールは、厚さ3mmのジュラルミン製です。普通の赤道儀のウォームホイールの厚さは10mm程度の物が多いので、比べるとかなり薄いことがわかりますが、メリットとして、軽量化の他に線膨張係数が筐体のアルミ材とほとんど同じなため、氷点下の過酷な環境で使用してもギヤの噛み合わせが変わらないということがあります。では、薄くても大丈夫なのかという疑問も湧いてくると思いますので、ご説明します。普通の赤道儀のウォームホイールとギヤは、ウォームホイールの歯面のR(凹)よりもウォームネジのRの方がずっと小さいので、実際には図のようにギヤ同士の中央部しか接していません。ギヤ同士は線接触をしています。下の写真は使い込んだ一般の赤道儀のウォームホイールですが、ウォームネジと線接触した部分が黒く変色しています。この触れる部分は0.5mmにも満たない僅かな幅なのです。このことから、ホイール自体の強度が充分に確保されていれば、3mmの厚みでも何の問題もないことがわかります。
さて、SWATのウォームホイールの素材は軽量で強度のあるジュラルミン製です。その板からモジュールに対応したサイクロイドカーブの平ギヤ状歯型を切り出しています。その原材をもとに、独自手法のホブでさらに歯切りを行い、最終的に実機のウォームネジと組み合わせて仕上げ研磨をしています。
下の写真は原材のウォームホイール(右)と仕上げの完了したウォームホイール(左)です。歯面がウォームネジのRと同じになって、ネジ状に傾きが生じていることがわかります。ウォームホイールの歯面は最初の図のようにウォームネジのRにぴったり面接触をするので、ウォームホイールの厚みは3mmですが、中央の0.5mmしか接していないウォームギヤに比べて、はるかに安定して丈夫であることがわかります。また、ウォームホイールは歪みを防ぐために精密に設計されたアルミ削り出しの筐体でサンドイッチされ、ウォームホイール上下面のグリスを介して摺動します。これはスムーズで高精度な回転を得るためのSWAT独自の手法です。
今回は、SWATシリーズの優れた追尾性能を生み出す秘密のひとつをご紹介しました。
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