温度変化によるピンボケにご用心。
画像は愛用しているフローライトアポクロマートのボーグ90FLに1.4×テレコンを使って撮影したもので、その中心像を等倍で切り出して、ホワイトバランスとレベル調整しています。撮影したのは11月上旬。ピント合わせを終えて、19時半から撮影開始(左)、コンポジット用にタイマーで複数枚撮りました。約1時間後の20時40分の画像(右)は、こんな状態です。ピントが完全にズレています。ガイドもイマイチですが、それは無視で。(笑) 撮影前の温度順応が充分でなかったり、撮影中に気温がグッと下がってきたような時は、フローライトやED、SDといった高性能なアポクロマートほどピント位置の変化でピンボケになる可能性が高いです。上の画像を撮影したときは、撮影開始後20分後くらいからピントが徐々にボケ始めていました。これからの季節、夜が更けるにつれて気温が一段と下がるような時は、こまめにピントをチェックするようにしましょう。作例の時は気温の変化というより、クルマから機材を出した後の温度順応が不充分だっと思われます。
もう少し詳しく書きますと、レンズは温度で形状が変わる(低温時には小さくなる)ので、それによって「ジャスピンの位置は」前に動きます。鏡筒も低温時には小さくなりますが、レンズの膨張率よりも鏡筒のアルミの膨張率の方が数倍も大きいので、レンズと鏡筒の両方が低温になると「ジャスピンの位置は後ろに」動きます。したがって、気温を見てピントがどのくらい狂うかを計算で求めるのは容易です。しかし、レンズとアルミは熱伝導率がまったく異なります。とくにレンズは外気に晒されている部分と周囲は先に冷えるので、完全に冷え切ってからでないと計算のとおりにピントは動きません。その上、フローライトやED、SDなどの異常分散ガラスは、気温で屈折率も変わるのでなおさら厄介です。最近、カーボン鏡筒などもあります。熱膨張はアルミの約20分の1ですから、この場合はレンズの膨張率の方が大きくなりますね。いずれにしても、こまめにピントを確認する必要があります。
それにしてもピントが合ったときの90FLの星像はシャープです。色の滲みもほとんど感じないです。ボーグさんからは今月中に上級機の107FLが発売されるようですし、その性能が楽しみですね。SWAT-350に載るようなら欲しいです。でも予算が…(悩)
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