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2020年3月

2020年3月25日 (水)

BORG 72FL+SWAT-350ノータッチで撮るIC2177。

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●IC2177カモメ星雲
2020年3月21日19時25分~ ボーグ 72FL+レデューサー×0.72 + HEUIB-IIフィルター 焦点距離288mm F4 キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO3200 90秒露出×71枚 FlatAidePro、Photoshopで画像処理 SWAT-350ノータッチ追尾 千葉県大多喜町
 
21日の遠征で、アトラス彗星を撮る前に撮影したのが、このIC2177カモメ星雲。薄明終了直後から撮り始めて、総露出1時間46分です。当初風が強く、約15%のロスが出ました。ポータブル赤道儀はある程度の焦点距離になると風が天敵になりますね。光学系は今回もBORGさんの新製品72FL+×0.72レデューサーで、焦点距離288mm、口径比F4です。カタログ値では288mmですが、実際に撮影された画角から逆算すると焦点距離300mmちょうどくらいと思います。星像は全面にわたって極めて鋭く、この対物レンズの素性の良さがよくわかります。最周辺像も四隅のうち一方向(上の画像では左下)のみ、わずかな流れがあるだけで、他はほぼ点像を保っていて、とても優秀な結果となりました。この流れは個体差がありますので、参考程度に捉えてください。
 
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今回の撮影システムなら、機材の組み立て、極軸調整、ピント合わせまで、30分もかからないと思います。あとは撮影対象に向けてシャッターを切るだけ。なんともお気楽な撮影ですが、SWAT-350なら300mmクラスをきっちり追尾できる魅力があります。

SWAT-350はピリオディックモーション±7″前後の追尾精度を実測して保証しています。この精度はフィルム時代なら300mmクラスを追尾するのに充分でしたが、最近の高画素デジカメやそれに対応した極めてシャープな光学系ですと、もう少し厳しくみないといけません。ただし、撮影対象が極に近づけばもっと甘くてすみますので、実際に何枚か試写して、ピントや星像の流れを確認してから、本番撮影に入るとよいでしょう。数分露出のときの赤経方向の流れはピリオディックモーション、赤緯方向の流れは極軸設置誤差(赤経にも影響しますが)が主因のことが多いです。さらに機材の剛性なども絡んで、それらが複合して、星像の流れにつながります。また大気差の影響や恒星時(キングスレート)と合わない領域でもズレます。なかなか点像にならない場合は、それらをひとつひとつつぶして行くことが肝要になります。感度を上げて露出時間を切り詰めるのも効果大。ピリオディックモーションの測定についてはこちらこちらをご覧ください。
余談になりますが、ノータッチ撮影では一般的に恒星時(キングスレート)だけの追尾になります。すると、撮影開始から終了まである程度の時間がかかったときなど、星の位置が撮り始めと最後で、かなりズレていることもあると思います。これは大気差の影響が大きいのですが、恒星時だけでは完璧には追えないことを表しています。つまり、いくらピリオディックモーションが優秀でも、露出時間には限度があるということです。ある程度、焦点距離が長くなる場合、極軸の設置精度や機材の剛性、大気差を考えれば、星が点像を保てる数分(一般的には2~3分)以内の露出で多枚数撮影がお勧めです。ノータッチ撮影の限界はありますが、それでもお気軽に撮れる魅力は大きいですし、充分に高画質な天体写真を得ることができます。こまごま書きましたが、もっとパーフェクトに追いたいときには、ひと手間かけてオートガイドすれば解決します。もちろんSWATはオートガイド撮影にも対応しています。まもなく2軸ガイドにも対応します。まだまだ発展するSWATにどうぞご期待ください。
 
https://www.unitec.jp.net/ 

2020年3月23日 (月)

C/2019Y4 アトラス彗星。

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●C/2019Y4アトラス彗星(彗星核基準、トリミング)
2020年3月21日22時19分~ ボーグ 72FL+レデューサー×0.72 + HEUIB-IIフィルター 焦点距離288mm F4 キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO3200 90秒露出×18枚 FlatAide、Photoshopで画像処理 SWAT-350ノータッチ追尾 千葉県大多喜町
 
この3連休は新月期の好天とあって、どこも賑わったのではないでしょうか。私も昨年9月以来、半年ぶりに遠征(近場ですが)して、SWATで撮影を楽しみました。秋からV-specの生産でずっと忙しく、ようやく撮影に出かけられるゆとりができました。撮影については、すっかり手順を忘れてしまっていて、難しいことをやるとポカしそうだったので、ノータッチと決めて出発しました。鏡筒は新製品のボーグ72FL。好評だった71FLの後継機とあって、性能は折り紙付きです。 さて、撮影したのは話題のC/2019Y4アトラス彗星で、上の画像は彗星核基準で約27分間分をコンポジットしています。左下に尾が見えている感じですね。ほぼピクセル等倍です。
 
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●C/2019Y4アトラス彗星とM81M82(恒星基準、ほぼノートリ)
2020年3月21日22時19分~ ボーグ 72FL+レデューサー×0.72+ HEUIB-IIフィルター 焦点距離288mm F4 キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO3200 90秒露出×18枚 FlatAidePro、Photoshopで画像処理 SWAT-350V-specノータッチ追尾 千葉県大多喜町
 
こちらは恒星基準でコンポジットして、ズレた部分だけトリミングしています。ボーグ72FLにレデューサー×0.72を使いましたが、中心像は極めてシャープです。最周辺はやや流れますが、充分に許容範囲といえます。フラットは撮らなかったので、周辺減光はFlatAideProで補正しました。ご参考にJPG撮って出し画像と撮影システムを載せておきます。
 
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実際に使ってみて感じたことですが、SWAT-350とボーグ72FLを組み合わせたノータッチ撮影は、使い勝手が抜群で、かなりお勧めできます。今回は、マルチ赤緯ブラケットでエルボータイプのドイツ式に組みましたが、カメラが本体や三脚と干渉しないので、長時間ガイドでも安心です。撮影時には極望は外しています。
※画像のSWAT-350は社内の機能試験機で製品版とは外観が異なります。
    
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2020年3月11日 (水)

M51子持ち銀河、再処理。

前回ブログのM51子持ち銀河を「天体画像処理入門」でおなじみの蒼月さんに再処理していただきました。手抜きでFlatも撮らなかったため、Lightフレームのみでの依頼でしたが、PixInsightを使った高度な処理で、ひどい露出不足のM51が見事に生まれ変わりました。さすが蒼月さんです。私の処理では到底ここまで描出できません。画像処理はまだまだ奥が深いと思い知らされる結果となりました。画像処理でここまで差がつくというよい見本ですね。ぜひ私の処理と見比べてください。蒼月さんの凄さがわかります。高度な画像処理を目指す方は、ぜひ「天体画像処理入門」をご一読ください。私もですね…(笑)
  
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●M51子持ち銀河
2020年2月24日0時51分~ 宇治天体精機 60cm 準リッチークレチアン 焦点距離 5,400mm キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO6400 30秒露出×60枚コンポジット PixInsight、Topaz DeNoise AI、Photoshopで画像処理 宇治天体精機スカイマックス60cmドイツ式赤道儀 ノータッチ追尾 撮影地 宇治天体精機敷地内
 
■蒼月様のコメント
画像処理ソフトはいつもの通りPixInsightで行いましたが、かなりざらざらだったので、最後に Topaz Denoise AIを使ってノイズリダクションしました。しかし、結果的には、あまりきれいな画像は得られませんでした。第一に、露出が短すぎるため、淡い部分はバイアスに埋もれるような格好となって充分に炙り出すことができませんでした。加えて、かなり星像が流れていたので画像復元も十分ではなく、この60センチ鏡の性能の1割程度しか発揮できていないのではないかと思います。それでも、親銀河の腕に沿ってHII領域(ややマゼンタ色に見える点が全部そうです)が沢山点在していることがわかりますし、親銀河の青い腕が子銀河を貫いていることも辛うじて確認できます。これで完璧な追尾をしてたっぷり露光できればいったいどれだけの画像が得られるのか、本当に楽しみですね。次に宇治天体精機さんで撮影するときには、しっかり追尾して、たっぷり露光し、フラットフレームも撮ってください。今回は三重苦(露出不足、ガイド不良、フラットなし)の画像処理でした(笑)。
 
■係より
テクニックを駆使した画像処理をしていただき、ありがとうございました。F9で僅かに30秒露出ですが、ここまで描出できることにびっくりです。超短時間でも枚数を稼げば長時間露光に迫れることを実証したような作品となりましたが、淡い部分はバイアスノイズに埋もれてしまうことから、やはりある程度の露出時間は必要なのでしょうね。次回はオートガイドさせてもう少し露出を稼ぎたいと思います。今回もSWATとは何の関係もない内容でした。(笑)
 
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2020年3月 1日 (日)

M51子持ち銀河。

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●M51子持ち銀河
2020年2月24日0時51分~ 宇治天体精機 60cm 準リッチークレチアン 焦点距離 5,400mm キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO6400 30秒露出×45枚コンポジット ステライメージ7、Photoshop、Topaz DeNoise AI、FlatAideProで画像処理 宇治天体精機スカイマックス60cmドイツ式赤道儀 ノータッチ追尾 撮影地 宇治天体精機敷地内
 
前回に引き続き、宇治天体精機製60cm反射による作例です。今回はM51子持ち銀河。暗い対象ですから、F9で30分にも満たない総露出ではさすがにつらいです。これも無理矢理炙り出してザラザラの画像をTopaz DeNoise AIで滑らかにして、それなりに見えるように仕上げました。当然、満足いく結果ではないですが、それでも大迫力ではあります。下にJPG撮って出しを掲載します。焦点距離5.4mのノータッチはなかなか厳しいものがあり、次回はオートガイドさせて5分程度の露出で挑めればと思っています。
 
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ISO6400で30秒露出です。シンチレーションで星像が大きくなったとしても、もう少し露出が欲しいところですね。
  
https://www.unitec.jp.net/

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