【修正版】大気差グラフ
ひとつの天体を長時間撮影すると構図が徐々にズレてくることがあります。それには複数の要因が絡んでくるのですが、大気差もそのひとつしてよく知られています。赤道儀がどんなに高精度に一定速で回っても、星の動きが微妙に変化しているのですから、長時間にわたって完璧に追尾するのは不可能なのです。
大気差とは大気の屈折で星が実際の位置より上に浮き上がって見える現象で、低空ほど大きく、天頂に近づくほど影響が小さくなります。その時の気圧や気温、湿度なども影響してくるので、簡単には表せません。また東西南北それぞれの星の軌跡が微妙に浮き上がることを考えると頭が混乱してしてしまいますね。
さて、今回天体写真愛好家のなかでも有名人揃いの星沼会で活動されているだいこもん様より、新たに計算しなおした大気差グラフをお送りいただきました。上がその最新グラフになります。再計算にあたっては国立天文台の沖田博文先生とも議論を重ねたとのことで、これまで知られていた大気差グラフよりかなり正確になったとのことです。だいこもん様もご自身のブログに掲載されてますので、ぜひこちらもご覧ください。
https://snct-astro.hatenadiary.jp/entry/2024/07/16/152714
グラフは北緯40°の地点での星の見掛けの速度になります。縦軸は極軸一回転の時間(秒)、横軸が天体の時角(方位)で0hが子午線(南中)、マイナスが東方向、プラスが西方向、6hが真西、12hが真北、18hと-6hでつながります。描かれた曲線が各赤緯値による見掛けの速度になります。以前、SWATブログに掲載した大気差グラフとはそこそこ違いがあり、天頂付近の天体の速度は恒星時でしたが、今回再計算された値はキングスレートとほぼ合致する速度で恒星時より遅いとう結果になっています。恒星時よりも見掛けの速度が速くなるのは赤緯50°以上の天体が北極星の下側を通過する場合のみとうことも示されています。ちょっと面白いのは赤緯+80°と赤緯0°の天体の南中の地平高度はどちらも50°(北緯40°)ですが、見掛けの速度が100秒以上も違っていたり、周極星の下方経過はけっこう速いこともわかります。いろいろ新発見があって新鮮な驚きでした。
実際の星座をざっくりとグラフにあてはめてみますとグレー破線(赤緯0°)はオリオン座、紫破線(赤緯-30°)がさそり座、黄実線(赤緯+40°)がこと座、黒実線(赤緯60°)がカシオペヤ座、緑実線(赤緯80°)がケフェウス座のとがった先端(γ星エライ)付近です。
再計算の結果をみても、いかにキングスレートが天体撮影に適した値かということがよくわかる結果となっています。SWATの駆動速度はキングスレートを採用しています。
https://www.unitec.jp.net/