天体写真

2025年5月 7日 (水)

シグマ 105mm F1.4 Artでアンタレス付近

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●アンタレス付近
2025年4月29日23時16分~ シグマ 105mm F1.4 Art 絞りF2.2 キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO1600 90秒露出×101枚コンポジット(総露出2時間31.5分) SWAT-350V-spec Premiumによるノータッチ追尾 Photoshopによる画像処理 撮影地 千葉県南房総市(白浜海岸駐車場)

4月29日の房総半島遠征で一番気合いを入れて撮ったのが、カラフルタウンと呼ばれて人気の高いさそり座のアンタレス周辺です。お気に入りのシグマ 105mm F1.4 Artで約2時間半の露出を得ました。この焦点距離だとカラフルタウンの他に青い馬星雲(IC4592)も一緒に構図に入ります。天の川方向に伸びる暗黒帯やさそりのハサミ付近の淡い星雲もまとめて撮れるので、なんともちょうどよいレンズです。
写真中央やや下に写っているオレンジ色の星が一等星アンタレス。そのすぐ右に大型の球状星団M4があります。このエリアはとてもカラフルで画像処理できれいに表現するのがとても難しいです。さそり座は真夏の星座のイメージがありますが、撮影に関しては春の星座に入れてしまってもよいくらいで、梅雨に入る前までが撮影好機といえます。もちろん夏休みに入ってからも撮れますが、薄明が終わる頃に南中していてすぐに西に傾いてしまいます。意外と撮影時間が少なく、条件もよくないことが多いです。月末の新月期が好条件で撮れるチャンスです。ぜひ狙ってみてください。
この撮影に使ったシグマの105mm F1.4 Artも神レンズの一本で天体撮影に最適な性能です。それもそのはず、設計者のO氏は生粋の天文ファンで、おそらく天体撮影に適した贅沢な設計をしてくれたんだと思います。余談ですが、彼はSWAT-350のユーザーでもあります。
 
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PixInsightで天体名を貼り付け。ちょっとした写真星図になっていい感じです。

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上は試写を含めて撮影した101枚のJPGをピクセル等倍で切り出してGIF動画(1コマ0.1秒/トータル約10秒)にしたものです。全画像ガイドエラーなしのパーフェクト、歩留まり100%でした。左右が東西方向になります。約2時間半にわたる露出で約23回のピリオディックモーションが記録さているはずですが、SWAT-350は追尾精度が高いので、105mmレンズでは検出不可能でした。ちなみに105mmレンズの6Dでの解像度は1ピクセル12.8″です。極軸設置誤差のため、徐々に南に下がっていきます。極軸が少し東を向いていたようです。ピクセル等倍なので大きく動いて見えますが、実際には2時間半で13.5′くらいのわずかなズレです。低空のため大気差で見掛けの速度が遅くなり、キングスレート追尾で東に4.5′ほどズレました。画像処理しながらPremiumには低空追尾モードを搭載しているのを思い出しました。次回は忘れずに使いたいと思います。追尾速度のズレは極軸高度の設置誤差の可能性もあります。それから背景の暗さの違いもわかります。撮影終了時がアンタレスがほぼ南中した時刻で、地平高度が約30°、開始の時は20°ですから条件がよくなるとともに空の暗さが増していきます。加えて光害が落ち着くのもあると思います。

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2025年5月 5日 (月)

さそり座

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●さそり座
2025年4月30日02時05分~ シグマ 40mm F1.4 Art 絞りF2.2 キヤノン EOS 6D(SEO-SP4改造) ISO1600 90秒露出×18枚コンポジット(総露出27分) SWAT-350V-spec Premiumによるノータッチ追尾 Photoshopによる画像処理 撮影地 千葉県南房総市(白浜海岸駐車場)

梅雨入り前に晴れたら、好条件でさそり座を撮影できるチャンスです。今回は50mm標準レンズより画角が広い40mmですから、余裕をもってさそりのS字を取り込めました。もっと露出時間を稼げば、淡い散光星雲や青い反射星雲もさらに描出できそうです。この日の白浜は風が強かったのですが、その分透明度もよかったようで、目視でも天の川が濃く見えました。低空を狙うには、湿度がそこまで高くないこの時期の快晴は貴重です。それにしてもカラフルで賑やかなエリアですね。美しいです。話しは変わって、房総半島には勝浦とか白浜とか紀伊半島と同じ地名があります。関東に住んでる人は勝浦といえば千葉ですが、関西の人は和歌山になるのでしょう。両者を区別するのに勝浦は「安房勝浦」「那智勝浦」、白浜は「安房白浜」「南紀白浜」と呼ばれることもあるようです。これは昔、紀伊半島の漁師たちが魚を追って東に移動し、よい漁場を房総にみつけてそこに移り住みました。そしてふるさとを懐かしんで似た景色の場所に同じ地名を付けたらしいです。千葉も和歌山も東京や大阪の大都市から適度に離れていて、天体撮影に好適な場所が多いというのも似ているもしれませんね。

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PixInsightで星座線と天体名を書き込みました。

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前回の「天の川中心部」と構図が重なる部分が大きかったので、2枚をモザイク合成してみました。
 
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2025年5月 3日 (土)

シグマ 40mm F1.4 Artで天の川中心部

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●天の川中心部
2025年4月30日03時00分~ シグマ 40mm F1.4 Art 絞りF2.2 キヤノン EOS 6D(SEO-SP4改造) ISO1600 60秒露出×10枚コンポジット(総露出10分) SWAT-350V-spec Premiumによるノータッチ追尾 Photoshopによる画像処理 撮影地 千葉県南房総市(白浜海岸駐車場)
 
シグマの生産終了になった神レンズ「40mm F1.4 Art」で撮った天の川中心部です。前回ブログの14mmによる天の川の前に撮っています。この日は低空まで比較的透明度もよく、さそりのしっぽあたりまでスッキリ写ってくれました。カメラはフィルター改造を施していますので、点在する赤い星雲もよくわかります。バンビの横顔の上(北)にM16、M17、すぐ下(南)にM20(三裂星雲)とM8(干潟星雲)、さらに南に下がって、彼岸花星雲、出目金星雲、えび星雲が写っています。40mmレンズはけっこう画角(対角約57°)が広く、こういった天の川を切り取るのに最適なほか、オリオン座やさそり座などの全景を狙うのにもうってつけと思います。星像は極めてシャープなうえ、周辺減光も小さいので天体撮影にお勧めできるレンズなのですが、いかんせん中古でしか入手できないのが残念です。

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天の川中心部の星雲星団の位置をPixInsightで画像に書き込みました。
 
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2025年5月 1日 (木)

立ち昇る夏の天の川

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●夏の天の川
2025年4月30日03時24分~ シグマ 14mm F1.8 Art 絞りF2.2 キヤノン EOS 6D(HKIR改) ISO1600 60秒露出×9枚コンポジット(総露出9分) SWAT-350V-spec Premiumでノータッチ追尾 Photoshopで画像処理 トリミングあり 撮影地 千葉県南房総市(白浜海岸駐車場)
 
昨年11月3日の紫金山アトラス彗星以来、半年ぶりに撮影に出かけました。撮影地は房総半島先端の白浜です。梅雨入り前にぜひ狙いたいのが「さそり座」。南の空に低いのでなかなか好条件で撮れるチャンスが少なく、この時期で月に邪魔されない日は特に逃したくないエリアです。画像はシグマの超広角14mm F1.8で撮った天の川です。白浜の空はとても暗く、東京都心から2時間で行ける場所としてはトップクラスの暗さではないでしょうか。前回の大多喜町での天の川撮影と同様の1分×9枚という短時間露出ですが、元画像のS/Nがよいので、あっさりした画像処理でも充分に見応えのある仕上がりになりました。白浜は海沿いのため内陸より風が強いことが多く、この日もいつもの大多喜町では2m/sほどの予想でしたが、白浜では常時6m/sほどの風が吹いていました。雲だけでなく風の予測もよく確認して、風の強い日は短い焦点距離にとどめておくことをお勧めします。それから海からの風の日はやめた方がよいでしょう。

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2024年11月 6日 (水)

300mm望遠によるIC1396

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●IC1396
2024年11月3日20時31分~/2018年10月7日19時03分~ シグマ APO 300mm F2.8 DG HSM 絞り開放 キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO1600 2分露出×73枚コンポジット(総露出2時間26分)+短時間露光をHDR合成 ステライメージ9、Photoshop、SXT、BXT(PI)で画像処理 SWAT-350V-specノータッチ追尾(2018年はM-GENによる一軸オートガイド) 撮影地 千葉県南房総市/千葉県大多喜町
 
11月3日は紫金山・アトラス彗星を撮影後、そのまま帰るにはあまりにも惜しい星空だったので、続けてIC1396を撮りました。過去に同じ機材で撮った画像があったので、構図をだいたい合わせて2分露出で21枚撮りました。多少のズレは仕方ありません。ズレた部分はトリミングです。デジタル時代ですから、6年前のデータを引っ張り出して新たに撮影したデータを加算できるという技?が使えます。そのうえ画像処理ソフトウェアの進歩のおかけで2018年版よりも大幅に画質が向上できました。フィルム時代を体験してきた私としては、まるで天国です。半分冗談ですが、あの頃はいったい何をやっていたのだろうと思います。(笑)

今回のIC1396もベガから目盛環で一発導入しています。
●ベガ  赤経: 18h 36m 56.3s 赤緯: +38°47' 01"
●IC1396 赤経: 21h 39m 06.0s 赤緯: +57°30' 00"
ざっと、東へ3h 北へ18.5°振っただけで導入できました。自動導入は確かに便利ですが、目盛環を使えば暗い天体も簡単に導入できます。ぜひご活用ください。
※SWAT-310は赤経恒星時目盛環ですから、常に正しい赤経座標を示しており、その場合、差分計算は必要なく、天体の座標に合わせるだけで導入できます。SWAT-350の目盛環は恒星時で回らないので、今回の導入のように基準星からの差分で導入するのが便利です。SWAT-350も一度正しい座標に赤経目盛りをセットし、その後の経過時間(時計の時間で実用上問題ない)を次の天体導入前に西に回してやれば、直後は恒星時目盛環と同様に使えます。ちょっと面倒くさい裏技ですかね。
 
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2024年11月 4日 (月)

まだ迫力ある11月3日の紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)

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●紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)
2024年11月3日18時58分~ シグマ APO 300mm F2.8 絞り開放 キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO1600 60秒露出×30枚コンポジット(彗星核基準) SWAT-350V-specによるノータッチ追尾 ステライメージ9、DeepSkyStacker、Photoshopで画像処理 撮影地 千葉県南房総市

もうすっかり下火になった紫金山・アトラス彗星を300mm望遠で撮影してみました。彗星は地球から遠ざかっても拡大すれば、充分に迫力ある姿で撮れるのが面白いです。今回は300mm望遠で60秒露出ですが、SWATの追尾性能ならオートガイドすることなく点像に写せます。お気軽撮影といえども、星が流れてしまっては気分もがっかりですよね。ぜひSWATの高性能でお気軽でも本格的な撮影をお楽しみください。
 
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上の画像は300mm望遠でベガを中心に入れて、目盛環を使って彗星を導入したときのズレです。一発でこれくらいの精度で導入できます。下の例のように座標をざっと引き算しただけですが、500mmクラスくらいまでならこれで充分な導入精度です。あとは微調整で構図を決めます。それぞれの座標は以下の通りです。

●ベガ
赤経: 18h 36m 56.3s 赤緯: +38°47' 01"
●C/2023A3 紫金山ATLAS彗星(11/3 19時頃)
赤経: 18h 09m 26.1s 赤緯: +03°48' 22"
※彗星は日々刻々と座標が変化しますので、星図ソフトなどでその日の位置を調べてください。

導入後に構図を調節するので細かい計算は必要なく、赤経は西へ27.5m、赤緯は南へ35°カメラを振って導入した結果です。自動導入がなくても天体の導入は意外と簡単です。ぜひご活用ください。
 
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シグマ 20mm F1.4 Art 絞りF2 キヤノン EOS 6D(SEO SP-4改造) ISO1600 10露出×10枚コンポジット 固定撮影
 
広角レンズで固定撮影した画像を恒星基準でコンポジットしました。周辺星像が流れてますが、固定撮影した画像(広角レンズは歪曲収差が大きい)を無理矢理合成したためです。一枚はずつはもっとずっとシャープな星像です。この日は自由雲台を忘れてしまったので、仕方なく固定撮影しましたが、赤道儀で追尾すれば周辺星像はこんなに流れません。
 
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2024年10月23日 (水)

21日撮影の紫金山アトラス彗星(C/2023 A3)

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●紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)
2024年10月21日18時26分~ シグマ 105mm F1.4 Art 絞りF2.5 キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO400 60秒露出×29枚コンポジット(彗星核基準) SWAT-350V-specによるノータッチ追尾 ステライメージ9、DeepSkyStacker、Photoshopで画像処理 撮影地 長野県諏訪郡富士見町
 
前日の20日は雲に邪魔され、満足な撮影ができませんでした。翌21日も同じ場所でとも思いましたが、GPV予報で西方向の雲の状況を検討した結果、少し南下して八ヶ岳山麓の富士見町に変更しました。天候は前日より明らかに良好で、到着したときからずっと快晴。19時に雲がかかるまで何の問題もなく撮影できました。上の画像は薄明終了あたりから曇るまでの29分間の露出を彗星核基準で合成したものです。アンチテイルがはっきりと描出できました。充分に暗くなってからの撮影なので、恒星の数がこれまでの薄明中の撮影より圧倒的に多くなりました。彗星核基準でコンポジットしたため恒星が流れていますが、核の左に見えるふたつのもやっとしたものは球状星団です。左がM10で右がM12です。紫金山・アトラス彗星は、これからどんどん小さく、そして暗くなりますが、彗星の面白いのは小さくなった分、焦点距離を長くして撮ると意外と似たような迫力で撮れることがあります。そうなるとSWATの追尾精度がさらに活かせます。もうしばらくは楽しめます! 晴れたらぜひ狙ってみてください。今回は一泊して彗星三昧の撮影旅でした。仕事から離れてとても気分転換になりました。たまにはこういう撮影もいいものですね。

※SWATは超高精度で恒星時追尾しますが、地球に近い彗星は恒星時では正確に追尾できません。恒星と彗星の両方流れないように露出時間のバランスを取ることが大切です。21日の紫金山・アトラス彗星の見掛けの速度は恒星時より遅いので、追尾モードを太陽にして恒星とのバランスを調整するとより露出時間を延ばせる可能性があります。(その時の見掛けの速度は星図ソフトなどで調べてください)彗星は基本的に地球に近いと見掛けの動きが大きく、遠く離れると恒星に近くなります。また赤緯方向にも動くので何枚か試写してチェックするようにしてください。ちなみに21日は恒星時と彗星の見掛け速度のほぼ真ん中くらいが太陽時でした。
 
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ところで初心者の方から日没から暗くなってくる段階の彗星導入が難しいという話をよく耳します。肉眼彗星なら簡単ですけど、暗い彗星や天体は簡単には見つけられないものです。そんなときに頼りになるのが目盛環。実は今回の撮影でも最初は目盛環を使ってそこそこ明るいうちに導入を終わらせています。
上の星図は21日18時、諏訪の西の空です。左下に金星、真ん中上に紫金山アトラス彗星がいます。望遠レンズを使って撮影する場合は極軸の設置精度も大切です。まず、北極星が見えてきたタイミングで極軸合わせをして金星を導入します。そこから彗星との差分を目盛環を見ながら回せば導入できます。上の図でいえば、黒い経線が赤経赤緯の座標ですから、ざっくりと赤経は東に30分、赤緯は北に25°動かすだけです。これで試写すれば写野のどこかに入っているはずで、あとは微調整するだけ。広角や標準レンズ程度の画角があれば、極軸をだいたい北に向けただけでも写野のどこかに入っていることが多いです。今回はたまたま金星が近くにあったので、それを使って導入しましたが、もちろん他の星でもかまわないです。SWATは目盛環を装備していますから、ぜひ使ってみてください。探すのに時間を無駄にするのはもったいないです。
※500mmクラス以上の長焦点の場合は基準星との差分をもっと正確に出さないとズレが大きくなります。
 
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今回はポルシェ乗りの星仲間(SWATユーザー)とご一緒しました。
 
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私の撮影システム。SWAT-350にシンプルフォークDX2で赤緯体を構築、カウンターウェイトで東側荷重を維持して安定追尾を狙います。レンズはお気に入りのシグマ 105mm F1.4 Art、これは神レンズです。
 
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日没後のシルエット。撮影開始までしばしの休憩時間。
 
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2024年10月22日 (火)

20日撮影の紫金山アトラス彗星(C/2023 A3)

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●紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)
2024年10月20日18時12分~ シグマ 105mm F1.4 Art 絞りF2.5 キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO400 20秒露出一枚撮り SWAT-350V-specによるノータッチ追尾 Photoshopで画像処理 撮影地 長野県塩尻市
 
天気予報によると20日(日)と21日(月)は絶好の撮影日和になりそうとの予測で、両日とも晴れそうなエリアを物色して長野方面への遠征を決めました。安宿に一泊してのダブルヘッダーです。機材はお気楽にシグマ 105mm望遠とSWAT-350V-specのみのシステム。設置、撤収ともあっという間に終わります。それでいてSWATの追尾精度は大型赤道儀並みですから、105mm望遠のガイドは当然のようにノータッチです。

さて、初日(20日)は宿を取った岡谷から20分ほどで行ける諏訪湖西側の小高い山にある駐車場から狙いました。初めての撮影地なので、まずは Light polution map でだいたいの光害を調べたところ、諏訪や岡谷の影響はありますが、彗星のいる西側は大丈夫だろうと判断しました。現地到着後に機材を設置して暗くなるの待ちました。しかし残念なことに肝心の西側の空に雲が居座ってなかなか彗星が捕らえられません。薄明終了から月が昇るまでの18時30分~50分頃のゴールデンタムは逃しました。雲が取れて彗星が全貌を現したのは19時15分で、その時の地平高度は15°程度で、さらに低空の透明度はかなり悪く、良質な元画像はほとんど得られませんでした。残念な結果となりましたが、無理矢理コンポジットして処理した画像を下に掲載します。21日に撮影の分はこれから処理しますので、一両日中にはブログに掲載します。クリアーに撮影できたので、今回の画像より多少なりとも好結果を期待できそうです。
 
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●紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)
2024年10月20日19時15分~ シグマ 105mm F1.4 Art 絞りF2.5 キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO800 30秒露出×11枚コンポジット(彗星核基準) SWAT-350V-specによるノータッチ追尾 ステライメージ9、DeepSkyStacker、Photoshopで画像処理 拡大トリミングあり 撮影地 長野県塩尻市
 
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西側にはずっと雲が居座って、スッキリとはいきませんでした。
 
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日没と撮影機材。
 
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今回のお気楽システム。自分でいうのもなんですけど、なかなか使い勝手がよくて、お気に入りの組み合わせです。
 
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2024年10月15日 (火)

伊豆大仁での紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)

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●紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)
2024年10月14日18時10分~ シグマ 105mm F1.4 Art 絞りF2.5 キヤノン EOS 6D(HKIR改造) ISO400 4秒露出×26枚コンポジット(彗星核基準) SWAT-350V-specによるノータッチ追尾 撮影地 静岡県伊豆の国市大仁
 
昨日の関東付近の天気予報で晴れる可能性が高そうだったのが伊豆半島でした。実は別件でこの地へ行く用事があったので、そのついでといっては何ですが、せっかくなので晴れたら紫金山・アトラス彗星を撮るつもりで105mmレンズとカメラ、赤道儀関係を積み込みました。本当に久しぶりの撮影で一年以上撮ってなかったと思います。あまりに間隔が空いたので、何かやらかしそうで心配でしたが、無事に機材を組み上げてスタンバイ完了しました。仲間内からの情報で肉眼で見えるということでしたが、金星以外なかなか見えません。やきもきしているとアークトゥールスが見え始めました。金星とアークトゥールスの真ん中あたりと聞いていたので、そのあたりに目を凝らすとなにやら怪しい光芒を感じました。その付近にカメラを向けてシャッターを切ると見事な尾を引いた彗星が写っていました。時間の経過とともにはっきり尾を引く彗星が見えてきました。「こりゃ大彗星だわ」と思いながら撮影を始めました。

撮影中、彗星の方向に動きの遅い雲が出て、写野に居座ってしまいました。残念ですが仕方ないです。これだけ撮れれば充分です。上の画像は彗星核基準でコンポジットしたものです。地上部分は地上のみ数枚コンポジットしたものを最後のコマの地上に合わせて貼り付けました。それで流れてない画像になっています。彗星らしい姿は一枚でも見事に写せましたが、一枚ではまったく確認できないアンチテイルがコンポジット後に炙り出すことで描出できました。

今回、撮影しながら地元の方や同じホテルに宿泊の星好きなお客さんに声を掛けてもらって、彗星が沈むまでの小一時間、天文談義に花が咲きました。趣味を通してこういったコミュニケーションがとれるのも楽しいものですね。

SWATは終始安定していて無事に撮影終了。片付けも三脚ごとクルマの脇まで運び、バラしてトランクに詰め込み終わるまでわずか10分程度です。このお気軽さはポータブル赤道儀ならではですね。
 
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現地到着時に富士山を望む。いい天気です。
 
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こんな感じに組み上げて、極軸をだいたい北に向けただけです。105mm程度で短時間露光の場合、この程度のセッティングで充分です。
今回はアリミゾキャッチャーにアルカスイスアタッチメントを介してシンプルフォークDX2を装着して2軸運用としていますが、シグマ105mm Artは三脚座でレンズを回せるので3軸となります。赤経赤緯で彗星導入後にレンズを回して地上を水平にしました。

紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)はまだまだ楽しめます。来週は薄明終了後の月明かりのない時間帯がチャンスです。露出をかけて尾の淡い部分まで写った壮大な彗星の姿をものにできるかも。私も狙います!
 
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色調整しただけのJPEG撮って出し。
  
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2024年8月19日 (月)

SWATで自動導入やディザリング撮影が可能に

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ほしぞloveログ」で有益な情報を発信中のSAMさんより、SWATを使った自動導入&ディザリング撮影に成功したとのメッセージをいただきました。自動導入は一年前のブログで実現していたのですが、今回は上級者の必須テクニック「ディザリング撮影」まで実現したとのことです。
SAMさんのこのシステムは、追尾精度が異様に高いけど自動導入できないSWATと安価で自動導入できるけれど追尾精度が劣るAZ-GTiを組み合わせて、両方のいいとこ取りをしようという発想で生まれたシステムです。SAMさんは愛着を込めて SWAgTi (gは発音せず、スワッティ)と呼んでいます。このシステムの何が便利かというと、目的天体を自動導入できて、SWATのグレードにもよりますが、焦点距離300mm(露出時間を調節すれば500mmクラスでも)くらいまでなら、なにかと面倒くさくて失敗の原因にもなりがちなオートガイドをしなくても安定して星を点像に写せることです。今回ディザリングまで可能になったことで、上級者の高度な撮影テクニックにも対応できるようになり、SWAgTi 単体でのお気軽な撮影はもちろん、サブ機としてのほったらかし撮影でもものすごい高品位な元画像を得られるので貴重な晴れの時間を無駄にしないですみます。
ディザリングは任意の枚数を撮影した後、構図をわずかにずらしながら撮影を継続する方法で、カメラに固有の様々なノイズを低減する効果があり、上級者の必須テクニックになっています。ノイズの低減効果は劇的でダーク減算を省いても問題ないほど。忌まわしいシマシマノイズともおさらばです。
興味のある方はSAMさんのブログをぜひご覧ください。こちらで→ https://hoshizolove.blog.jp/archives/52348766.html

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SAMさんがSWAgTiでテスト撮影したM27亜鈴星雲。FS-60CB、3分露出×40枚(2時間露光)
ダーク補正、バイアス補正を省いてもノイズ感がないこの結果を得られました。光学系によってはフラット補正も必要ないかもしれません。(上の画像もフラット補正してない)

以下、SAMさんのブログよりまとめのコメントです。
「ここまで使えるようになると、このSWAgTiで色々試したいことが出てきます。軽くて、コンパクトで、設置も楽。精度も出るし、機能的にも十分。5kg以下の機材は全てSWAgTiまかせにしてよさそうです。CGX-LもしくはCGEM IIとSWAgTiの2台体制でも、時間的にも精神的にも十分余裕が出そうです。使用頻度が大幅に増える予感しかありません。」

SAMさんのご厚意により、9月15日に京都で開催の「星をもとめて2024」でデモ予定です。
(ユニテックは今年の胎内星まつりには参加しません)

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