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2018年5月21日 (月)

PixInsightで画像処理を始めよう ~ 第4回 花有清香月有陰(2)

【目次】

4-1. 画像復元
 (1) Deconvolution
 (2) MultiscaleLinearTransform


4-1. 画像復元

第3回では、FFTRegistration によって沢山の画像を重ね合わせることでノイズを減らし、滑らかな画像を得ることができました。
しかし、図3-7 や図3-8 をよく見ると、確かに滑らかにはなったものの、なんだか少しぼやけていますよね。これは、第1回でも触れたように、主に地球の大気の影響です。地上から分厚い大気の層を通して撮影する以上、どんなにピントを合わせても多少ぼやけて写ってしまうものなのです。でも、元々ははっきりくっきりした像だったはずです。それが、地球の大気によってぼけた像になってしまったのです。地球の大気だけでなく、レンズ等の光学系の収差によっても、ぼやけたり歪んだりすることがあります。
そのように光学系や大気等、様々な影響によって劣化した画像を修正し、元のはっきりくっきりした画像を再現することを「画像復元」と総称したりします。今度は、この少しぼやけた月の写真を画像復元して、はっきりくっきりした画像にしましょう。

(1) Deconvolution

画像復元にはいろいろな方法がありますが、今回ご紹介するのは、Deconvolution というプロセスです。この Deconvolution は、PI を代表する「優れものプロセス」の一つでして、一言でいえば Convolution の逆です。「じゃあ、Convolutionって何だ?」ということになりますが、これを単純に翻訳すると「畳み込み積分」とか「重畳積分」という日本語訳が出てくると思います。どっちにしても頭の上に「?」マークが2万個くらい出てきそうですね。(笑)
Deconvolution の考え方については、第4.5回の補足で少しだけ詳しく解説していますので、興味のある方はそちらを見ていただくとして、ここではそんな数学的な難しいことは置いといて、とりあえず使ってみることにしましょう。

メニューバーから、PROCESS > Deconvolution > Deconvolution と辿って起動してください。

04_01_select_deconvolution
図4-1. Deconvolutionを起動

もちろん、PROCESS > All Processes > Deconvolution でも構いません。
すると、下図のような画面が立ち上がります。

04_02_deconvolution
図4-2. Deconvolution

さっそく Deconvolution を実行してみたいところですが、Deconvolution をいきなり画像全体に適用すると処理に少々時間がかかるので、その前に一部分だけを切り取って、その中だけで、いわば「試し処理」をしてみることにします。

ツールバーの "New Preview Mode" をオンにして、どこでも良いのであまり大きくならない範囲を選択してください。

04_03_select_preview
図4-3. Preview領域を選択

すると、画像のウィンドウの左側の枠に "Preview01" というタブが現れます。そして、それをクリックすると、先ほど選択した preview 領域だけが表示されるようになります。

04_04_preview01
図4-4. Preview領域だけを表示

この領域に対して、Deconvolution の試し処理を施してみます。
Algorithmオプションは、まあどれでも良いんですが、デフォルト通り "Regularized Richardson-Lucy" を選択してみましょう。Richardson-Lucy法というのは、光学設計に詳しい方なら馴染み深いのではないでしょうか。他のオプションも、まずはデフォルトのままで実行してみます。
プロセスの実行は簡単で、プロセス画面の左下にある四角マークを押すか、もしくは下図のように三角マークを処理対象の画像にドラッグ&ドロップするだけです。

04_05_deco_dd
図4-5. Deconvolution実行

これだけでも画像が少しくっきりとしてくると思います。

ここで、Preview画面に対しては、ツールバーの下図の矢印マークを押すことでプロセス実行の Undo/Redo を繰り返し表示することができます。これで、プロセス実行前後の画像の変化を見て、その効果を確認することができるわけです。

04_06_undoredo
図4-6. Undo/Redo Preview

デフォルトパラメータでどの程度の効果があるかがわかったら、次に、StdDevShape の値を少し変更して再度実行してみてください。この2つのパラメータを変えて何度か実行して Undo/Redo を繰り返していると、そのうち2つのパラメータのスイートスポットがわかってくると思います。どこがスイートスポットなのかは、画像によっても違いますし、人それぞれの好みもあるかと思いますが、私は下の画像くらいが良いのではないかなと思います。

04_07_deco_sweetspot
図4-7. Deconvolution実行例

ぼやけていた画像がだいぶくっきりしてきましたね。2つのパラメータのスイートスポットがわかったら、Iteration を 30~50くらいに上げて再度確認し、それで良ければ今度は画像全体のタブに切り替えて、画像全体に対して実行してください。画像の画素数が大きくなればなるほど、また Iterationの回数が多くなればなるほど、処理には時間がかかるようになるので、そのおつもりで。

04_08_deco_doall
図4-8. パラメータが決まったら画像全体に実行

これで、Deconvolution 完了です。

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(2) MultiscaleLinearTransform
 
Deconvolutionで画像復元したら、今度は画像の輪郭を強調しましょう。輪郭を強調すると、画像がシャープに見えるようになります。

使うプロセスは、MultiscaleLinearTransform(MLT) です。UnsharpMask というプロセスでも似たような効果が得られるのですが、今回は MLT を使ってみます。

04_09_mlt
図4-9. MultiscaleLinearTransform

これも Deconvolution 同様、なんだかパラメータやオプションがいっぱいあって、見ただけで「もうわけわからん!」と言いたくなりますが、この MLT は、画像をシャープにしたりぼかしたり、あるいはノイズを減らしたりと、色々な用途で万能的に使えるプロセスです。おまけに MLT には Real-Time Preview 機能がついていて、いちいち実行しなくてもリアルタイムで効果を確認することができます。
まず、図4-4と同様に月のPreview領域だけを表示するようにし、MLTの左下の丸印のボタンを押して、Real-Time Preview 画面を表示します。
そして、2もしくは3くらいの比較的小さな Layer(レイヤー)で Bias のスライダーを右に動かします。

04_10_mlt_beforeafter
図4-10. Real-Time Preview上での MultiscaleLinearTransform実行例

Bias をプラス方向に動かせば、そのレイヤーが強調されます。
このレイヤーについても補足でもう少し詳しく解説しますが、この処理で月のクレーター等の輪郭が強調されます。人間の目は、物の輪郭が強調されるとシャープになったように見えるから不思議ですね。それはともかく、Real-Time Preview を使えば、パラメータ値を変えるとその都度すぐに効果が確認できるので便利です。Real-Time Preview で Bias値のスイートスポットがわかったら、Deconvolutionのときと同様、月の画像全体に MLT を実行します。なお、さきほども言った通り UnsharpMask でも似たような効果が得られるので、気になる方は UnsharpMask も試してみて、気に入った方のプロセスを選択してください。

では、ここまでの画像処理によって、撮って出し画像がどのように変わってきたのか、繋げて見てみることにしましょう。

04_11_sofar
図4-11. MLTまでの処理結果

どうですか?だいぶ印象が変わって見えるようになったと思います。

今回は、Deconvolution にしろ MLT にしろ、必要最小限のパラメータしか変更していませんが、それでもかなりの効果が見られます。どちらのプロセスもパラメータが沢山ありますので、色々とパラメータを変えて試してみて、自分の好みに合ったパラメータセットを見つけてみて下さい。

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つづく

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