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2018年5月 7日 (月)

PixInsightで画像処理を始めよう ~ 第3回 花有清香月有陰(1)

【目次】

3-1. 画像復元
3-2. FFTRegistrationで重ね合わせ
3-3. Crop(クロップ)
3-4. 明るさを調整しよう


3-1. きれいなお月さんは、好きですか。

星雲や星団といった一般的な天体写真は大変暗いので、長時間にわたる露光が必要となります。したがって、それなりの機材構成が必要となる等、初心者には少々ハードルが高いものです。それに比べて、月は明るく、ある程度の面積があるので、 比較的初心者でも対象としやすい天体と言えるでしょう。 それに、気候がだんだん暖かくなってくると、夜に月を撮影するのも苦ではなくなってきます。かの蘇軾でなくとも、花有清香月有陰(花に清香有り、月に陰有り)と詠みたくなる季節です。

月は私たちにとって最も身近な天体でもありますし、皆さんの中にも、月の写真なら撮ったことがあるという人は少なくないと思います。ということで、この連載では、まず月の写真を画像処理してみましょう。

上記のとおり、月は明るいので、数十分の1秒から数百分の1秒程度の露出で撮れます。最初に撮って出しのJPEG画像を見てください。

03_01_moon_s
図3-1 月の撮って出し画像(上:全体、下:一部拡大)

撮影日:2018/3/25
撮影地:横浜市
レンズ:BORG71FL、Tele Vue 3x Barlow(合成焦点距離1200mm)
架台:SWAT-200
カメラ:SONY α6000
ISO感度:400
露出:1/100秒

写真上が全体写真で、下がその一部(緑枠部分)を等倍に拡大したものです。(いずれも少し明るくしてあります。)よく写っていると思いますが、拡大部分をよく見ると、ザラザラしているのがわかりますね。これはノイズです。
ノイズにもいろいろと種類がありますが、このザラザラの主たる原因は、一般的に「ランダムノイズ」といわれるノイズによるもので、ISO感度や露出時間等のカメラの設定が同じでも、撮るたびに出方が違います。

こうしたランダムノイズを減らす方法としてよく用いられているのが、何枚も撮影してそれを重ね、画素ごとに平均をとるという方法です。次の図を見てください。

03_02_ave_comb
図3-2. 加算平均概念図

これは、画像のノイズの量を棒グラフであらわしたものです。上のA~Dの4つの画像のノイズはすべて出方がバラバラで、そのばらつきも大きいです。しかし、この4つを重ね合わせて平均をとると、下のグラフのように、ばらつきが小さくなります。ここでは4枚でしたが、10枚、20枚と重ね合わせる枚数が多くなればなるほど、原理的にはばらつきが小さく(ノイズが少なく)なります。

この原理を利用して、ノイズを減らしましょう。そのために、まずは写真をたくさん撮っておいてください。

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3-2. FFTRegistrationで重ね合わせ

撮影が終わったら、いよいよ PixInsight で画像処理です。
ところで、一般的に、デジタルカメラの出力形式には JPEG と RAW の2種類があるかと思います。天体写真の画像処理には、RAWデータの方が都合が良いことが多く、月でもそれは同じです。ただ、「初めてだったから JPEGで撮っちゃった(てへっ)」という人も多いでしょうし、JPEGでも処理できないわけではないので、今回は JPEG画像を使うこととします。

さあ、まずはノイズを減らすために、沢山の月の写真を重ね合わせることから始めましょう。しかし、撮った写真を何枚か見比べてみると分かると思いますが、下図のように月が写っている位置が微妙にズレていることがあります。

03_03_slide
図3-3. 月が写っている位置がわずかにズレている

重ね合わせるときには、月がしっかりと重なるように位置を合わせてから重ね合わせなければ意味がありません。月の位置を合わせ、それらを重ね合わせるのによく使われるのが、FFTRegistration というスクリプトです。FFTとは、Fast Fourier Transform(高速フーリエ変換)の略です。大学の工学系の学部で学ばれた方にはお馴染みの言葉だと思いますが、詳しいことはわからなくてもとりあえず処理はできますから、身構えなくても大丈夫ですよ。

月の位置合わせは StarAlignment という別のプロセスを使ってもできるのですが、少々面倒くさいので、ここでは FFTRegistration を使うこととします。メニューバーから、SCRIPT > Utilities > FFTRegistration と辿って起動してください。

03_04_select_fftr_s
図3-4. FFTRegistrationを起動

すると、次のような FFTRegistration の画面が立ち上がります。

03_05_fftr
図3-5. FFTRegistration

Add ボタンを押して、Target Images に月を撮った画像を入力してください。

03_06_fftr_select_images
図3-6. FFTRegistrationへのデータ入力

ただ、位置合わせのためには、どれかの画像を基準としなければなりません。その基準画像を1つ選んで Reference Image に入力してください。右側の Select ボタンから選択できます。基準画像は、なるべくブレが少なくて綺麗に撮れているものを選ぶと良いでしょう。

それから、写真によって月が写っている位置が大きくズレてしまっている場合には、画面下の Registration Options から、Enable large translations を有効にした方が良いでしょう。また、写真によって月が回転してしまっている場合には、Correct for rotation も有効にした方が良いかもしれません。もっとも、SWATのような赤道儀にカメラを載せて、月を追尾しながら撮影していれば、普通は上の2つのオプションは不要かと思います。これらのオプションを付けると、処理に時間がかかるようになるので、要注意です。OKボタンを押して実行すると、しばらくして次のような画像が画面上に出力されます。

03_07_fftred_s
図3-7. FFTRegistration後(上:全体、下:一部拡大)

FTTRegistrationで重ね合わせる前の画像と比較すると、ノイズが減って滑らかになっていることがわかると思います。2倍拡大した次の画像の方がわかりやすいですね。

03_08_fftr_beforeafter
図3-8. FFTRegistration前後の画像比較(2倍拡大)

なお、これと同様の機能を持つプログラムとして、Autostakkert! (AS)というフリーソフトがあります。AS はフリーであるにもかかわらず非常に優れたプログラムでして、品質の悪い画像を捨てて、品質の良いものだけで重ね合わせを行うことができる等、使い勝手が良く、なにより処理速度が速いので、この処理だけであれば AS を使う人が多いと思います。

私もこの処理だけであれば AS を使う派ですが、FFTRegistration も決して悪くはありませんし、複数のプログラムを使ってその間でデータをやり取りするというのは、不便な面もあります。そのときの都合や好みに応じて、使うプログラムを変えて処理するというのも良いでしょう。

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3-3. Crop(クロップ)

ところで、この月の画像は背景宇宙の黒い部分が少々広いです。処理したいのはあくまで月であって、背景宇宙は余分なので、これから色んな処理を施す前に、この余分な部分をある程度切り取って(クロップして)おきましょう。

メニューバーから、PROCESS > All Processes > DynamicCrop と辿って、DynamicCropを起動します。

そして月の画像上にマウスポインタを移動させると、マウスポインタが十字になります。その状態で、切り取りたい範囲をマウス操作で選択します。

03_09_dynamiccrop_select
図3-9. DynaimcCropで任意の範囲を選択
 
選択した範囲は、マウス操作で広げたり狭くしたり、あるいは回転させたりすることも可能なので、適宜調整します。

03_10_dynamiccrop_rotate
図3-10. 範囲を回転
 
範囲が決まったら、DynamicCrop の一番下の左から二番目のチェックマークをクリックすると、選択した範囲のとおりにクロップされます。

03_11_dynamiccrop_apply
図3-11. 実行してクロップ
 
クロップ後、ウィンドウ左下の Fit View ボタンを押すと、画像の表示サイズに合わせて(1/4サイズで表示しているのなら 1/4サイズに合わせて)ウィンドウサイズが変わります。

03_12_fitview
図3-12. Fit View でウィンドウサイズを調整
 
Fit View はよく使うので、覚えておくと便利です。

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3-4. 明るさを調整しよう

ところで、写真の全体的な明るさは、その写真によって異なります。これから様々な処理を施すことになりますが、その度に明るさが変わることもあります。明るすぎたり暗すぎたりすると、処理の効果がわかりづらくなります。ですから、ここで PI で最も基本的な明るさの調整方法を学習しておきましょう。

メニューバーから PROCESS > All Processes > ScreenTransferFunction と辿って、ScreenTransferFunction(STF)を起動します。

03_12_stf
図3-12. ScreenTransferFunction
 
まず、明るさを調整したい画像をアクティブにして、STFの右下のチェックマークをオンにします。さらに、左上の鎖のマークをオンにします。その状態で、R/G/Bのバーの真ん中にある三角マークを左右に動かしてみてください。鎖マークをオンにしていると、R/G/B/の三角が連動して動きます。

0313_stf
図3-13. STFでの明るさ調整
 
左に動かすと明るくなり、右に動かすと暗くなります。これで、ちょうど良い明るさにしてください。しかし、ここで注意が必要です。STFで明るさを調整しても、それは画面上で(見かけ上)明るさが変わっているだけで、画像の情報自体は変えていません。ですから、暗い画像を STF で明るくしても、それだけの状態で画像ファイルに保存すると、暗い画像のまま保存されてしまいます。いわば、処理を実行する前の Real-Time Preview みたいなものです。

STFで調整した明るさを実際に反映するには、HistogramTransformation(HT)というプロセスを使って、次のような手順で行ないます。

0314_ht
図3-14. HistogramTransformation
 
① STF左下の三角マークを HT の一番下の少し色が違う枠にドラッグ&ドロップ
② HT左下の三角マークを画像にドラッグ&ドロップ
③ STF右下の Reset をクリックして、STFの設定をリセットする

0315_applystf
図3-15. STFで調整した明るさをHTで反映する手順
 
こんな風に明るさを調整するのはなんだか面倒くさいと思うかもしれませんが、慣れるとなんでもなくなってきますし、STF のようなプロセスが必要な理由は後々わかることになりますので、今は我慢してください。なお、STF で調整した結果を反映するのは、画像を保存するときに最後に1回だけすれば良くて、それまでは STF で見かけ上の明るさを調整するだけで構いません。今後、処理を続ける途中で明るさを調整したくなったら、その都度 STF で見かけ上の調整をしてください。
 
ここまででひとまず準備完了といったところです。次回(第4回)からいよいよ画像処理っぽくなってきますよ。乞う、ご期待!

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つづく

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