« PixInsightで画像処理を始めよう ~ 第4.5回 【補足】 Layerとは? Deconvolutionとは? | トップページ | PixInsightで画像処理を始めよう ~ 第5.5回 【補足】 Image Processing Tips »

2018年6月 6日 (水)

PixInsightで画像処理を始めよう ~ 第5回 花有清香月有陰(3)

【目次】

5-1. 色合いを変えてみよう
5-2. コントラストを強調しよう
5-3. 彩度を調整しよう
5-4. RAWデータから処理すると・・・


前回の第4回までで最低限の処理は終わりました。 ここから先は、お好みで、あるいは必要に応じてやる、ということで良いと思います。

5-1. 色合いを変えてみよう

第3回から始めた月の画像処理は、カメラ撮って出しのJPEG画像を元画像としてやってきました。カメラ撮って出しのJPEG画像というのは、概ね人間が目で見た通りの色合いになるように、ある程度カメラの画像エンジンで処理が施されたものです。前回までの写真を見てお解りの通り、月は全体的に黄色っぽく写っていますが、実際に望遠鏡で月を覗くと、やっぱり全体的に黄色っぽく見えるはずです。なので、あえてその色を変える必要もないのですが、黄色一辺倒というのもあまり面白みがありません。そこで、少し色合いを変えてみることにしましょう。

色合いを変えるにも様々な方法がありますが、今回は、人の目に頼らず、機械的に色調整をしてみます。

(1)  バックグラウンドをニュートラルに

色調整をするうえで、まず最初にやらなければいけないのは、背景(バックグラウンド)の色調整です。背景の宇宙はどの色にも偏っていない(ニュートラルである)はずですよね。逆に言うと、背景宇宙の色が、写真全体の色を決めるうえで一つの基準になるというわけです。なので、まずは背景宇宙の色の偏りをなくしましょう。

その準備として、図4-3 と同様の手順で、背景の一部を preview 領域で囲んでください。要は、その領域の色をニュートラルにしようというわけです。

囲む領域は背景であればどこでも構いませんが、月の光は強烈なため、地球の大気によって強く散乱されて、月のすぐ近くはニュートラルな色ではなくなっています。そこで、なるべく月から離れた領域を囲むと良いでしょう。(あまり気にする必要もありませんけどね。)

05_01_bnpreview
図5-1. ここをキャンプ地バックグラウンドとする

バックグラウンドとする領域を preview 領域で囲んだら、メニューバーから PROCESS > ALL Processes > BackgroundNeutralization と辿って BackgroundNeutralization(BN) を起動します。

05_02_bn
図5-2. BackgroundNeutralization

Reference image に先ほど囲んだバックグラウンドの preview 領域を指定して、図4-5 と同じ要領で、左下の三角マークをドラッグ&ドロップして実行します。

05_03_applybn
図5-3. BN実行

このプロセスは、Reference image の範囲のピクセルの平均(正確には中央値)がニュートラルになるように色調整します。大事なのは、バックグラウンドだけをニュートラルに色調整するわけではなく、あくまで画像全体を色調整しているという点です。バックグラウンドがニュートラルになるように、画像全体の色を等しく調整しているということです。

この画像の場合には、元々バックグラウンドがニュートラルに近いので大して変化がありませんが、元々のバックグラウンドの色が大きく偏っている画像の場合には、ここで色合いが大きく変化します。

なお、レタッチソフトを使ってこの操作をやる場合には、R/G/B のヒストグラムを見ながら手動で調整することになると思いますが、手動でやると、正確にニュートラルにすることはまず不可能です。こういった作業はコンピュータにやらせた方が速いし、なにより正確です。

(2)  明るいところを白く

背景の色をニュートラルにしたら、今度は「白」の基準を決めます。

まず、月の表面の中で、特に明るい部分を preview 領域で囲みます。囲む範囲は小さくて構いません。その領域の色を、今度は白だと仮定しようというわけです。

05_04_ccpreview
図5-4. 「ここは白い」と仮定する

もちろん、この領域が厳密に白であるはずなんかないのですが、ここは「色合いを変えてみよう」という話なので、とりあえずこの領域が白であるとした色調整をしてみます。

白の基準(white reference)とする領域を preview 領域で囲んだら、メニューバーからPROCESS > ALL Processes > ColorCalibration と辿って ColorCalibration(CC) を起動します。

05_05_cc
図5-5. ColorCalibration

CCを起動したら、一番上の White Reference の Reference image に 図5-4 で新たに囲んだ preview 領域を指定します。

次に、Structure Detection のチェックを外します。(外さなきゃいけないというわけではないんですけどね。)

そして、下の方にある Background Reference の Reference image に (1) で選んだバックグラウンド領域を再度指定します。

これでとりあえず準備はOKなので、また左下の三角マークをドラッグ&ドロップして実行します。

05_06_applycc
図5-6. CC実行

色が全体的に白っぽくなりましたね。実際に月を目で見た色合いとは少し異なると思いますが、月の表面の微妙な色の違いを表現するには、こちらの方が好都合だったりします。

ちなみに、ここでやった色調整は、レタッチソフトのレベル調整でも似たようなことができると思います。でも、レタッチソフトのレベル調整では、白や背景の基準とする領域は点でしか指定できないのがほとんどでしょう。それに対して、PixInsightは任意の領域の平均を基準とすることができます。

目次へ戻る この節のトップへ戻る

5-2. コントラストを強調しよう

ここまで、画像をシャープにしたり色合いを変えたりしてきましたが、ここで月全体をもう一度よく見ると、月の明るい部分(太陽の光が当たっている方)は、どこも一様に明るく、コントラストが低いと感じます。例えば、危難の海周辺は全体的に明るくなっていて、海がはっきりしません。

そこで、月全体のスケールでコントラストを高くしましょう。コントラストを上げる方法も幾つかありますが、今回は2つのプロセスを紹介します。

(1)  HDRMultiscaleTransform

ツールバーの PROCESS から HDRMultiscaleTransform(HDRMT)を起動します。

05_07_hdrmt
図5-7. HDRMultiscaleTransform

HDRMTは、ベタっと一様に明るくなってしまっている領域のコントラストを、各ウェーブレットレイヤーのスケールで回復させる効果があります。一番上の Number of layers はデフォルトでは "6" になっていますが、これを変えて数パターン実行してみましょう。

05_08_hdrmt
図5-8. HDRMT実行結果

人それぞれ好みもあるかと思いますが、この場合は 7 辺りが良いのではないかと思います。ベタっと明るかった危難の海周辺のコントラストが高くなり、海とそうでない部分がはっきりと区別できるようになりました。

(2)  LocalHistogramEqualization

2つ目に紹介するプロセスは、LocalHistogramEqualization(LHE)です。

05_09_lhe
図5-9. LocalHistogramEqualization

LHEは、contrast limited adaptive histogram equalization というアルゴリズムによって、所謂ローカルコントラストを上げるプロセスです。

第4回で登場した MultiscaleLinearTransform と同様、LHEにも Real-Time Preview 機能があるので、左下の白丸ボタンを押して Real-Time Preview 画面を見ながらパラメータを調整していきます。パラメータの数は少ないですし、決まった手順等はないのですが、以下のような手順で操作するのがやり易いかと思います。

  1. Contrast Limit を少し上げる (2. の効果が見やすくなる)
  2. Kernel Radius を調整する
  3. Amount (1. 2. で調整した画像と元の画像とのブレンド比) を調整する

05_10_rtp_lhe
図5-10. Real-Time Preview で見た LHE の効果

調整が終わったら、Real-Time Preview を閉じ、左下の三角マークをドラッグ&ドロップして適用します。

目次へ戻る この節のトップへ戻る

5-3. 彩度を調整しよう

画像の色が全体的に薄い場合には、CurvesTransformation(CT)を使って彩度を上げることができます。

05_11_ct
図5-11. CurvesTransformation

これは、レタッチソフト等での「トーンカーブ」に相当する変換ツールです。

3.5-2章で HistogramTransformation(HT)の説明をしましたが、あれと似ています。ただ、HTは Shadow/Midtone/Highlight を変えることで変換曲線を調整したのに対し、CT は変換曲線の形を直接変えることができます。

05_12_ct_ex
図5-12. CTでの変換曲線の例

さらに、このCTは、画像の明るさを変換するだけでなく、色の色相や彩度等も変換することができます。

CTの画面の一番右の下から4つ目の "S"(Saturation の S) をオンにすると、彩度を調整するモードになります。その状態で曲線を左上の方に反らせて実行すると、図5-13 のようになります。

05_13_applyct
図5-13. CT実行例

図5-13 のサイズだとややわかりづらいかもしれませんが、月表面の地質による色の違いがはっきりとわかるようになります。

ちなみに、図5-13で突然月の向きが変わっていますが、メニューバーの IMAGE > Geometry から画像の向きを変えることができます。

05_14_geometry
図5-14. 画像の向きを変える

目次へ戻る この節のトップへ戻る

5-4. RAWデータから処理すると・・・

ここまでは、カメラ撮って出しのJPEG画像を使って処理をしてきましたが、JPEG画像は RAWデータをカラー画像化(debayer)して、色合わせをして、さらに適度に明るくしたものです。したがって、RAWデータから処理する場合には、これらの処理を加える必要があります。具体的には、だいたい以下の通りの手順となります。 

  1. カラー画像化(debayer)
  2. 位置合わせ&重ね合わせ(FFTRegistration)
  3. 色合わせ(BackgroundNeutralization, ColorCalibration)
  4. 画像復元(Deconvolution)
  5. 明るくする(HistogramTransformation等)

色合わせは、重ね合わせ直後にやるのが望ましいです。しかし、そのままだと非常に暗いはずですので、STFで見かけ上の明るさを明るくしてから処理をしてください。実際に明るくするのは最後で結構です。

RAWデータから処理した例がこちらです。

05_15_raw
図5-15. RAWデータからの処理例 (クリックすると高解像度版が見られます)

同じように処理したはずなんですが、JPEG画像から処理したものとはまた違った色合いになっています。月表面の地質による色の違いは、こちらの方がわかりやすいかもしれませんね。

さて、第3回から計3回にわたって、月の写真を使った画像処理方法をご紹介してきました。 もちろん、他にも色々な処理方法がありますので、研究してみて下さい。

次回(第6回)からは、星野写真の画像処理方法を解説したいと思います。

目次へ戻る この節のトップへ戻る

つづく

« PixInsightで画像処理を始めよう ~ 第4.5回 【補足】 Layerとは? Deconvolutionとは? | トップページ | PixInsightで画像処理を始めよう ~ 第5.5回 【補足】 Image Processing Tips »

PixInsight」カテゴリの記事

画像処理」カテゴリの記事